木星の写真には、横方向に広がる縞模様や巨大な大赤斑が見えます。これらは大陸や海ではなく、大気上層の雲と風が作る模様です。
木星の外側は水素とヘリウムを主成分とする大気で、深くなるにつれて物質は圧縮され、高密度の流体へ変わります。さらに深部では、水素が電気を通す金属水素となり、中心付近には重い元素が広く分布した領域があると考えられています。
木星には人や探査機が立てる固体地表がなく、外側の大気から高密度流体、金属水素、中心領域へ物質の状態が連続的に変化します。
木星へ降下すると、固い面に着く前に、大気突入時の加熱、強風、圧力と温度の上昇によって機体が機能を失います。
木星には固体の地面があるのか

出典:NASA/JPL「High Resolution Globe of Jupiter」(Credit: NASA/JPL/University of Arizona)
木星の「地面」と「表面」は別のもの
地球では、大気の下に岩石でできた地殻があり、空と地面の境界がはっきりしています。
木星では、写真に見える雲の下にも水素とヘリウムを中心とする大気が続きます。深さとともに密度、圧力、温度が上がり、物質の状態が少しずつ変化します。
惑星科学で木星の半径や高度を表すときは、雲頂付近や一定の気圧になる位置を便宜的な基準面として使います。
木星で「表面」と呼ばれる場所は、主に雲頂付近を基準にした面であり、人が立てる地面を指す言葉ではありません。

| 言葉 | 木星での意味 |
|---|---|
| 地面 | 人や探査機が立てる固体面。木星本体には存在しない |
| 表面 | 雲頂付近や一定気圧になる位置を使った基準面 |
| 核 | 中心付近に広がる、重い元素を多く含む領域 |
木星は巨大ガス惑星
木星と土星は、主に水素とヘリウムでできた巨大ガス惑星です。
地球や火星は岩石を主体とする惑星で、天王星と海王星は水、アンモニア、メタンなどの成分を比較的多く含む巨大氷惑星に分類されます。
木星の大気は、分子数で見ると約9割を水素が占め、残りの大部分がヘリウムです。少量のメタン、アンモニア、水蒸気なども含まれています。
木星は太陽と同じく水素とヘリウムを主成分としますが、恒星のような水素核融合を始めるには質量が大幅に足りません。
木星の外側から中心までの内部構造

出典:NASA/JPL-Caltech「Jupiter Interior Graphic」
木星内部では、地球の地殻や海面のように、層と層が固い境界で区切られているわけではありません。
物質の密度と性質は、外側から中心へ向かって連続的に変化します。
外側|水素・ヘリウムの大気と雲
木星の外側には、水素とヘリウムを主成分とする大気があります。
上層にはアンモニア氷の雲があり、その下には硫化水素アンモニウムや水を含む雲層があると考えられています。
写真に見える白、茶、赤の模様は、雲の高度、成分、大気の流れの違いを反映しています。
内側|高密度の水素流体
大気を下るほど水素は強く圧縮され、密度が増していきます。
高温・高圧の環境では、気体と液体を地球上のようにはっきり分けにくい高密度流体になります。
木星内部では、水素が気体から液体へ急に切り替わるのではなく、深さとともに高密度の流体へ移り変わります。
そのため、地球の海面のような「ここから液体」という水平な境界は想定されていません。
深部|電気を通す金属水素
さらに深い場所では、圧力によって水素原子の電子が動きやすくなり、水素が金属のように電気を通す状態へ変わります。
この状態が金属水素です。
金属水素は金属板のような固体ではなく、木星内部では流動する高密度の物質として存在すると考えられています。
電気を通す金属水素の流れが内部ダイナモを作り、木星の強力な磁場を生み出します。
中心|重元素が広がる希薄な核
木星中心部には、岩石、氷、金属などに由来する重い元素が多く含まれていると考えられています。
従来は、小さく密度の高い核が中心にあるモデルがよく使われていました。
ジュノーの重力場観測からは、重元素が中心だけに集まらず、金属水素の領域へ広く混ざった希薄な核やぼやけた核の可能性が示されています。
木星の核は、地球の地面のように着地できる硬い球ではなく、重元素の割合が中心へ向かって増える広い領域として研究されています。
| 領域 | 主な状態 | 調べ方 |
|---|---|---|
| 雲頂付近 | 水素・ヘリウム大気と雲 | 望遠鏡・探査機で観測 |
| 深い大気 | 高密度の水素流体 | 大気データと物質モデル |
| 金属水素領域 | 電気を通す水素流体 | 磁場・重力場から推定 |
| 中心領域 | 重元素が多い希薄な核 | 重力場と内部モデルから推定 |
縞模様と大赤斑は大気の流れ
ゾーンとベルトを作るジェット気流
木星の明るい帯はゾーン、暗い帯はベルトと呼ばれます。
帯の境界では、東向きと西向きの強いジェット気流が交互に流れています。
木星は約10時間で1回転するため、自転による影響が強く、大気の流れが東西方向の帯へ組織化されます。
高速自転によって赤道付近がわずかに膨らみ、木星は完全な球より少し扁平な形をしています。
大赤斑は巨大な高気圧性の渦
大赤斑は、木星南半球にある巨大な高気圧性の渦です。
少なくとも19世紀から継続的に観測されており、現在も強い風を伴って回転しています。
大赤斑の大きさや色は長期間で変化し、近年は横幅が縮小する傾向も観測されています。
大赤斑は木星の地形ではなく、長期間続く大気中の渦です。
木星へ落ちたらどうなるのか

高速突入で機体前方のガスが加熱される
宇宙船が高速で木星大気へ入ると、機体前方のガスが急激に圧縮され、非常に高温になります。
大気突入時の加熱は、表面をこする単純な摩擦だけでなく、衝撃波とガスの圧縮によって生じます。
機体には急激な減速も加わり、耐熱材と構造には大きな負荷がかかります。
雲の中では強風と乱流を受ける
木星大気には、秒速100m前後に達するジェット気流や複雑な乱流があります。
降下位置によって風向や風速は異なり、雲の成分や雷活動も変わります。
パラシュートを使って減速できても、地面へ着地するのではなく、大気の中を降下し続けます。
圧力と温度が上がり続ける
深くなるほど上に重なる大気の量が増え、圧力は急速に上昇します。
温度も上がり、通信機器、電池、電子回路、構造材が順番に機能を失います。
さらに下では、周囲の物質が高密度の水素流体へ変わります。
木星への降下は、固体面への衝突ではなく、高温・高圧の流体の中で探査機が機能を失う形で終わります。
ガリレオプローブが実際に木星大気へ降下した

出典:NASA Science「Galileo Jupiter Atmospheric Probe」(Credit: NASA)
1995年12月、ガリレオ探査機から切り離された大気突入プローブが木星の大気へ入りました。
プローブは大気突入時に強い加熱と最大約228Gの減速を受けたあと、パラシュートを開いて降下しました。
約58分間にわたり、温度、圧力、密度、風速、大気組成などを測定してデータを送信しました。
通信が途絶えたのは、基準となる雲頂から約180km下、圧力が地球の海面付近の約22.7倍に達した頃です。
ガリレオプローブは、木星大気の中へ入り、現地で直接測定した唯一の探査例です。
ガリレオ周回機本体は衛星や磁気圏を観測し、2003年に木星大気へ意図的に突入しました。1995年に詳細な大気データを送った降下プローブとは別の機体です。
木星へ着陸する方法はあるのか
通常の着陸は、固体面に脚や車輪を接触させ、機体を停止させることを指します。
木星本体では降下を止める固体面がないため、探査方法は周回観測か、大気中を降下・浮遊する方式になります。
大気中を浮遊する探査機
一定の気圧と温度を持つ高度に、気球型や飛行船型の探査機を浮かべる構想は考えられます。
浮遊探査機であれば、大気中の風、雲、雷、組成を長期間測定できる可能性があります。
ただし、強風、放射線、通信、電力、浮力の維持といった課題があります。
木星の衛星には固体表面がある
木星を回るイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストには、岩石や氷からなる固体表面があります。
将来の着陸探査では、木星本体よりも、こうした衛星が主な候補になります。
特にエウロパには地下海があると考えられ、生命が存在できる環境を調べる探査が進んでいます。
木星内部をどうやって調べるのか
ジュノーが重力場から質量分布を測る
木星を周回するNASAの探査機ジュノーは、木星の重力によって軌道や速度が受ける小さな変化を測定します。
木星内部の質量分布が均一でなければ、ジュノーへ働く重力も場所によってわずかに変化します。
この変化から、ジェット気流がどの深さまで続いているか、重元素の多い中心領域がどこまで広がっているかを推定します。
ジュノーの観測から、木星の帯状の風は雲頂から約3,000kmの深さまで及ぶと考えられています。
磁場から金属水素の動きを調べる
木星は太陽系の惑星で最も強い磁場を持ちます。
ジュノーは磁場の強さと方向を詳しく測定し、電気を通す金属水素の流れと内部ダイナモを調べています。
磁場には地域ごとの偏りがあり、内部の流れが単純な左右対称ではないことも示されています。
高圧実験と物質モデルを組み合わせる
木星深部の圧力と温度を探査機で直接測ることはできないため、地上の高圧実験や量子力学にもとづく計算が使われます。
水素がどの圧力で金属的な性質を持つか、ヘリウムが水素から分離するか、重元素がどのように混ざるかを調べます。
現在の木星内部像は、ガリレオの直接測定、ジュノーの重力・磁場観測、高圧物質モデルを組み合わせて作られています。
観測で分かったことと研究中の課題
| 区分 | 現在の理解 |
|---|---|
| 直接観測 | 雲、風、雷、大気組成、浅い大気の温度と圧力 |
| 重力・磁場観測 | 深いジェット気流、金属水素、内部の質量分布 |
| 内部モデル | 高密度水素流体、希薄な核、重元素の分布 |
| 研究中 | 核の広がり、水の量、ヘリウムの分離、形成過程 |
核の広がりと重元素の分布
重元素が中心からどの範囲まで広がっているかは、採用する物質モデルによって推定が変わります。
希薄な核が木星形成時から存在したのか、形成後の衝突や内部混合によって広がったのかも研究されています。
木星内部の水とヘリウム
木星に含まれる水の量は、太陽系のどこで木星が形成され、どのような物質を取り込んだかを考える手がかりです。
深部では、ヘリウムが金属水素から分離して液滴となり、内側へ沈む「ヘリウムの雨」が起きている可能性もあります。
木星が形成された過程
主要な形成モデルは、岩石や氷を含む核が先に成長し、その後に大量の水素とヘリウムを取り込んだとする核集積モデルです。
原始惑星系円盤の一部が重力的に不安定になり、ガスが直接まとまったとする円盤不安定モデルも研究されています。
木星内部の重元素分布を詳しく知ることで、どの形成過程が実際の木星に近いかを絞り込めます。
木星の地面についてよくある疑問
木星に地面はありますか?
木星本体は、外側の大気から高密度水素流体、金属水素、重元素の多い中心領域へ連続的に変化します。人や探査機が立てる固体地表はありません。
木星の表面はどこですか?
木星の半径や高度を表すときは、雲頂付近や一定の気圧になる大気層を基準面として使います。写真で見える縞模様と大赤斑は、大気上層の雲と風です。
木星へ落ちるとどうなりますか?
高速突入時の加熱と減速を受け、その後は強風、高まる圧力と温度によって機体が機能を失います。固体面へ衝突する形ではなく、高密度の大気と流体の中で降下が終わります。
木星の中心には核がありますか?
中心付近には岩石、氷、金属に由来する重元素が多い領域があると考えられています。ジュノーの観測は、重元素が広い範囲に分布した希薄な核の可能性を示しています。
ガリレオ探査機はどこまで降りましたか?
ガリレオの大気突入プローブは、1995年に雲頂から約180km下まで降下し、約58分間データを送りました。通信が途絶えた地点の圧力は、地球の海面付近の約22.7倍でした。
まとめ|木星は大気から高密度流体へ続く惑星
木星には、人や探査機が立てる固体の地面がありません。
写真に見える縞模様と大赤斑は、大気上層の雲、ジェット気流、巨大な渦によって作られています。
外側の水素とヘリウムは、深くなるにつれて高密度の流体へ変わり、さらに深部では電気を通す金属水素になります。
中心付近には重元素が多く分布し、周囲との境界が広がった希薄な核がある可能性が示されています。
木星へ降下すると、固体面へ着く前に、大気突入時の加熱、強風、圧力と温度の上昇によって探査機が機能を失います。
1995年にはガリレオ大気突入プローブが約58分間にわたって木星大気を直接測定しました。現在はジュノーが重力場と磁場から、深いジェット気流、金属水素、核の広がりを調べています。
核の構造、水の量、重元素の分布、木星の形成過程には研究中の部分が残っています。木星の内部を調べることは、太陽系で巨大惑星がどのように生まれたのかを知る手がかりになります。
参考情報
- NASA Science|Jupiter Facts
木星の組成、金属水素、磁場、中心領域の説明に使用。 - NASA/JPL-Caltech|Jupiter Interior Graphic
木星内部の水素、ヘリウム、重元素分布の模式図と内部モデルの確認に使用。 - NASA Science|Galileo Jupiter Atmospheric Probe
1995年の大気突入、約58分の観測、降下距離、圧力、突入時の減速の確認に使用。 - NASA Science|Juno
ジュノーによる重力場、磁場、大気、内部構造の観測内容の確認に使用。 - NASA/JPL|High Resolution Globe of Jupiter
木星全球画像の出典として使用。