ダークマターが銀河を包み込み、見えない重力の影として宇宙を支える様子を描いたミステリーラボの記事アイキャッチ画像

ブラックホール・時空

ダークマターとは?なぜ存在するとわかるのか・正体はどこまで判明した?

銀河の写真には、無数の星と淡く広がるガスが写っています。ところが、星やガスがどのくらいの速さで回っているかを測り、背景銀河の像がどれほどゆがんでいるかを調べると、写真に写る物質を上回る重力源が浮かび上がります。

この追加の質量成分として考えられているのが、ダークマターです。

望遠鏡が直接記録しているのは、星やガスの速度、背景銀河の像のゆがみ、X線、宇宙背景放射の温度差などです。これらを重力理論や宇宙モデルと照らし合わせると、見える物質だけでは足りない質量分布が求められます。

ダークマターとは、複数の観測を説明するために必要とされる、正体の分かっていない質量成分の総称です。

ダークマターとは何を指す言葉なのか

光では捉えにくい質量成分

ここで使われる「ダーク」は、色の黒さではなく、光を使った通常の観測で捉えにくい性質を表しています。

星やガスは、光や電波、X線などの電磁波を通して観測できます。ダークマターは、こうした電磁波との反応が極めて弱いと考えられているため、望遠鏡の画像には通常物質のような姿で現れません。

存在を考える手がかりは重力です。星やガスの動き、背景銀河の像のゆがみを調べると、目に見える物質より多くの質量が必要になります。その不足分を担う成分として、ダークマターが導入されています。

ダークマターは、特定の一粒子につけられた名前ではありません。観測から必要になる未知の質量成分をまとめて呼ぶ言葉で、その中身については複数の候補が研究されています。

通常物質やダークエネルギーとの違い

通常物質、ダークマター、ダークエネルギーは、宇宙モデルの中で異なる役割を持っています。

成分 主な特徴
通常物質 原子をつくり、星・ガス・惑星・私たちの体になる。電磁波を使って観測できる。
ダークマター 運動や光のゆがみなど、重力的な影響から分布と量が推定される。
ダークエネルギー 宇宙膨張が加速していることを説明するために導入された成分。

ダークマターは、重力によって銀河や大規模構造の成長に関わります。ダークエネルギーは、宇宙全体の膨張が加速していることを説明する成分として扱われます。

ダークマターは構造形成に関わる質量成分、ダークエネルギーは宇宙膨張の加速に関わる成分です。

ダークエネルギーについては、加速膨張の観測とその解釈を扱った記事で詳しく説明しています。

何を観測してダークマターを推定するのか

ダークマター研究では、まず星や銀河、光の動きを測ります。そこから必要な重力源を計算し、見える物質との差を調べます。

銀河の回転、銀河団の運動、重力レンズ、宇宙背景放射、大規模構造という異なる観測が、同じ追加質量成分を指しているかを確かめることが重要です。

銀河の回転曲線

渦巻銀河では、星やガスが銀河中心の周りを回っています。その回転速度を、中心からの距離ごとに測ったものが回転曲線です。

中性水素が出す21cm線と呼ばれる電波を使うと、明るい星が少なくなる銀河の外縁部まで、ガスの速度を追えます。

見える星とガスの分布から重力を計算すると、外側では回転速度が下がる予測になります。ところが、多くの渦巻銀河では、外側へ進んでも速度が大きく下がらず、ほぼ一定に近い状態が続きます。

観測された回転速度は、見える星とガスだけから求めた予測より高い状態を保っています。

この食い違いは、銀河の外側まで広がる追加の質量分布を加えると説明しやすくなります。この広がりはダークマターハローと呼ばれます。

回転曲線から分かるのは、銀河の外側まで広がる重力源が必要になることです。その粒子の種類は、別の観測や実験によって絞り込まれます。

銀河の回転速度と見える物質から予測した速度を比較し、追加の質量分布を推定する流れを示す図解
望遠鏡で測った星やガスの回転速度を、見える物質の分布から予測した速度と比較する。両者の食い違いを説明するため、銀河の外側まで広がる追加の質量分布が推定される。

銀河団で見つかった質量不足

ダークマター研究の歴史をさかのぼると、見える質量の不足は銀河団で指摘されました。

1930年代、スイスの天文学者フリッツ・ツビッキーは、かみのけ座銀河団に属する銀河の速度を調べました。銀河の速度は、見えている星から見積もった質量だけでは銀河団を重力で束ねにくいほど大きいものでした。

銀河の回転曲線が一つの銀河内部の運動を調べるのに対し、銀河団では、集団の中を動く複数の銀河から全体の質量を見積もります。

銀河団の運動は、見える銀河を上回る質量が集団全体に広がっていることを示す初期の手がかりになりました。

重力レンズで質量分布を測る

質量があると、その周囲の時空が曲がり、奥にある天体から届く光の進路が変化します。この現象が重力レンズです。

背景銀河の像が大きく伸びたり複数に分かれたりする場合を強い重力レンズ、像がわずかに変形する場合を弱い重力レンズと呼びます。

銀河団Abell 2218の重力レンズによって背景銀河の像が細長い弧状に変形している画像
銀河団Abell 2218。細長い弧は、手前の銀河団の重力によって拡大・変形された背景銀河の像。像のゆがみを解析することで、銀河団の投影質量分布を推定できる。
Credit: NASA, ESA, and Johan Richard (Caltech, USA) Acknowledgement: Davide de Martin & James Long (ESA/Hubble)|ESA/Hubble

多数の背景銀河の微小なゆがみを統計的に解析すると、手前にある質量の分布を推定できます。

重力レンズが示すのは、その方向に重なった通常物質とダークマターを合わせた総質量です。星やガスから見積もった通常物質の量と比較し、追加質量の分布を求めます。

色付きの質量マップは、背景銀河の像のゆがみを解析して得た投影質量分布です。

バレットクラスターの画像は何を示しているのか

バレットクラスターの可視光画像にX線で観測した高温ガスと重力レンズから推定した質量分布を重ねた合成画像
バレットクラスター。ピンクはX線で観測した高温ガス、青は重力レンズ解析から推定した質量分布を示す。複数の観測結果を疑似カラーで重ねた合成画像。
Credit: X-ray: NASA/CXC/CfA/M.Markevitch et al.; Optical: NASA/STScI; Magellan/U.Arizona/D.Clowe et al.; Lensing Map: NASA/STScI; ESO WFI; Magellan/U.Arizona/D.Clowe et al.|Chandra X-ray Observatory

バレットクラスターは、二つの銀河団が衝突した天体です。画像には、可視光、X線、重力レンズという異なる観測結果が重ねられています。

疑似カラーが示す観測データ

星の集まりとして見えているのが可視光で観測した銀河、ピンクから赤の領域がX線で観測した高温ガス、青い領域が重力レンズ解析から得た質量分布です。

青い領域は、重力レンズ解析から推定した質量分布を疑似カラーで示しています。

色には、異なる観測データを一枚の画像上で見分けやすくする役割があります。

高温ガスと主要な質量分布が分離している

銀河団が衝突すると、それぞれの構成要素は異なる動きを見せます。

通常物質の多くを占める高温ガスは、衝突時に電磁的な相互作用を受けて減速し、中央付近に残ります。一方、銀河は空間的にまばらなため、互いの間を比較的そのまま通過します。

重力レンズから得た主要な質量分布は、中央の高温ガスよりも、通過した銀河の側に寄っていました。

通常物質の大部分を占めるガスと、重力レンズが示す質量の中心が分離しています。

このずれは、ガスとは異なる動きをする追加の質量成分を考えると説明しやすくなります。

観測が強く支持していること

バレットクラスターは、見える通常物質とは別の重力源が存在することを強く支持する観測例として扱われています。

ここで得られるのは質量分布の情報です。候補粒子の種類、質量、通常物質との反応の強さは、粒子探索実験など別の方法で調べます。

重力法則の修正によって説明する理論にとっても、ガスと質量分布のずれは重要な検証対象です。

宇宙背景放射と大規模構造が示すもの

CMBから成分比をどう推定するのか

ダークマターが宇宙全体のおよそ4分の1を占めるという推定は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の解析などから導かれます。

CMBは、宇宙誕生から約38万年後に自由に進み始めた光です。全天マップには、ごく小さな温度差が記録されています。

温度ムラを模様の大きさごとに統計解析すると、角度パワースペクトルと呼ばれるグラフが得られます。

WMAPが観測した宇宙背景放射の温度角度パワースペクトルと標準宇宙モデルの比較グラフ
WMAPの観測から得られたCMB温度角度パワースペクトル。観測データと標準宇宙モデルによる計算結果を比較し、複数の山の位置や高さから通常物質やダークマターなどの量を推定する。
Image Credit: NASA / WMAP Science Team|NASA LAMBDA

横軸は空に見える模様の細かさ、縦軸はその大きさの温度ムラがどれほど強いかを示しています。

グラフに現れる山の位置や高さは、通常物質、ダークマター、ダークエネルギーなどの割合によって変わります。宇宙モデルに含まれる値を変え、観測されたパターンと最もよく合う組み合わせを探します。

CMBから求める成分比は、観測された温度ムラと宇宙モデルの比較から得られます。

構造形成にどう関わるのか

初期宇宙には、密度がわずかに高い場所と低い場所がありました。この密度ゆらぎが、現在の銀河や銀河団の出発点です。

光と強く相互作用しない冷たいダークマターは、初期宇宙で光子と通常物質が強く結びついていた時代にも、重力によって密度差を成長させられます。

ダークマターの密度が高い領域は重力井戸となり、宇宙が冷えた後に通常物質が集まりました。その結果、星や銀河の形成が進んだと考えられています。

ダークマターは、通常物質が集まって銀河や銀河団へ成長するための重力的な土台として働きます。

冷たいダークマターを含む数値シミュレーションは、銀河の分布や宇宙の大規模構造のおおまかな特徴を再現します。

銀河より小さな規模では、観測と単純なシミュレーションの間に違いも残っています。星形成、超新星、ブラックホールからのエネルギー放出など、通常物質の影響を組み込んだ研究が進んでいます。

ボイドやコズミックウェブとの関係

銀河は宇宙に一様に散らばらず、フィラメント、銀河団、ボイドからなる網目状の構造をつくっています。この全体像がコズミックウェブです。

ダークマターを含む構造形成モデルでは、初期の密度差が重力によって成長し、フィラメントや銀河団が形成されます。低密度側は、ダークマターと通常物質の量が周囲より少ないボイドへ成長します。

ボイドの内部で何が観測され、どこまで分かっているかは、別記事で詳しく説明しています。

どこまでが観測で、どこからが解釈なのか

ダークマター研究では、観測装置が直接記録する量と、解析から求める質量分布、宇宙モデルによる解釈を分けて考えることが重要です。

ダークマター研究で直接測定するデータ、解析で求める量、宇宙モデルによる解釈の違いを示す図解
観測装置が直接記録するのは、星の速度、銀河像のゆがみ、X線、CMBの温度差などである。ダークマターの分布や宇宙の成分比は、それらを解析し、重力理論や宇宙モデルと比較して推定する。
区分 内容
直接測定するもの 星・ガス・銀河の速度、背景銀河の像のゆがみ、X線、CMBの温度差
データ解析で求めるもの 回転曲線、重力レンズによる投影質量マップ、CMBの角度パワースペクトル
標準モデルでの解釈 見える物質とは別の、冷たく衝突しにくい質量成分
正体の候補 WIMP、アクシオン、ステライルニュートリノ、原始ブラックホールなど
観測から絞り込み中 候補粒子の種類、質量、通常物質との相互作用の強さ
別の研究方向 重力理論の修正、複数の成分からなる可能性

複数の独立した観測は、見える物質を上回る質量成分を共通して示しています。その正体については、粒子探索や天文観測を通じて候補を絞り込んでいる段階です。

観測によって追加質量の必要性は強く支持され、研究の焦点は、その成分が何でできているかへ移っています。

ダークマターにはどのような性質が必要か

候補を比べるには、銀河や宇宙全体の観測を説明するために、どのような性質が必要になるかを整理することが重要です。

通常の光では捉えにくい

第一に、通常の電磁波観測で捉えにくい性質が必要です。星やガスのように強く光を出したり吸収したりする成分なら、すでに望遠鏡で見つかっているはずだからです。

通常物質との相互作用が極めて弱い候補であれば、望遠鏡では見えにくくても、地下検出器でごくまれな反応が起きる可能性があります。直接探索では、その小さな反応を探しています。

質量を持ち、構造形成に関わる

第二に、重力源として働く質量を持つことです。さらに、初期宇宙でどの程度の速度で運動していたかが、形成される構造の大きさへ影響します。

粒子が非常に速く動くと、小さな密度差がならされやすくなります。現在の標準モデルでは、主要な成分は運動が遅い冷たいダークマターとして扱われています。

通常物質で説明できる範囲

褐色矮星、暗い惑星、ブラックホールなど、光をほとんど出さない天体も質量を持っています。

これらがダークマターの一部を担う可能性はあります。一方、原子からできた暗い天体だけでは、宇宙背景放射や軽元素の存在比から求められる必要量をまかなうことが難しいと考えられています。

既知の暗い天体が担える量と、宇宙全体で必要とされるダークマター量には差があります。

正体の候補は何か

観測から求められる性質を満たす候補として、複数の粒子や天体が研究されています。それぞれ探索できる質量や反応の範囲が異なります。

現在は、実験と観測によって候補が存在できる条件を一つずつ狭めている段階です。

WIMP

WIMPはWeakly Interacting Massive Particleの略で、弱く相互作用する大質量粒子という性質を持つ候補の総称です。

質量を持ちながら通常物質とはごくまれにしか反応しないと想定され、地下での直接探索、加速器での生成、宇宙から届く粒子や放射を調べる間接探索が行われています。

液体キセノンを使うLZやXENONnTなどの検出器は、広い質量範囲でWIMPを探しています。

これまでの探索では確定的な信号に至っておらず、その結果によって、許される質量と相互作用の範囲は以前より大きく狭まりました。

未検出の結果は、単純なWIMPモデルの一部へ厳しい制限を与えています。

アクシオンとアクシオン様粒子

アクシオンは、素粒子物理の強いCP問題と呼ばれる課題を解くために提案された、非常に軽い粒子です。宇宙初期に大量に生成されていれば、冷たいダークマターになり得ると考えられています。

探索では、強い磁場の中でアクシオンがマイクロ波の光子へ変換される可能性などを利用します。ADMXのような装置は、周波数帯を少しずつ変えながら探索しています。

現在までに調べた範囲では、候補が存在できる条件に制限が加えられています。

強いCP問題に結びついたアクシオンと、より広い理論から現れるアクシオン様粒子は、似た性質を持つ候補としてそれぞれ研究されています。

ステライルニュートリノ

ステライルニュートリノは、標準模型の弱い相互作用を直接受けないと考えられている仮説上の粒子です。通常のニュートリノと混ざり合うことで、間接的な影響が現れる可能性があります。

質量や生成過程によっては、小規模な密度ゆらぎを冷たいダークマターよりもならしやすい暖かいダークマターの候補になります。

通常のニュートリノは軽く、初期宇宙で速く運動していました。そのため、銀河や大規模構造をつくる主要な冷たいダークマターの量を担う候補としては不足します。

原始ブラックホール

初期宇宙の大きな密度ゆらぎから、星の進化を経ずにブラックホールが形成された可能性も研究されています。これが原始ブラックホールです。

原始ブラックホールがダークマターの一部を占める可能性は残っています。重力レンズ、重力波、宇宙背景放射などの観測によって、質量範囲ごとに存在量が制限されています。

全ダークマターを担える可能性が残る条件は限られており、現在は質量範囲ごとの寄与率が詳しく調べられています。

ダークマターはどう探されているのか

ダークマター探索には、地下検出器、宇宙から届く信号、加速器、天文学的観測という異なる方法があります。

直接探索、間接探索、加速器探索、天文学的観測というダークマターの4つの探索方法を示す図解
ダークマターは、地下検出器で微小な反応を探す直接探索、宇宙から届く粒子や放射を調べる間接探索、加速器で見えない粒子の生成を探す方法、天文学的な重力効果を測る方法から調べられている。

直接探索

地下に置いた低バックグラウンドの検出器で、候補粒子が原子核や電子へ与えるごく小さな反応を探します。

XENONnTやLZが代表例です。地下深くに装置を置くことで、宇宙線などの背景信号を減らし、まれな反応を見分けやすくします。

候補粒子は通常物質との反応が非常に弱いと考えられているため、厚い岩盤を通過して検出器へ届く可能性があります。

間接探索

候補粒子が対消滅や崩壊を起こす場合に生じる可能性のある、ガンマ線、宇宙線、ニュートリノなどを探します。

同じ種類の粒子や放射は、パルサーや超新星残骸など通常の天体現象からも生じます。そのため、信号候補の方向、エネルギー分布、空間分布を詳しく調べます。

現在は、天体由来の背景と候補信号を区別しながら、ダークマターが生み出せる放射の強さへ制限を加えています。

加速器探索

CERNのLHCのような加速器で粒子同士を高エネルギーで衝突させ、見えない粒子が生成された痕跡を探します。

生成された粒子が検出器へ反応を残さず飛び去ると、衝突前後で運動量が不足します。この欠損運動量から、見えない粒子が作られた可能性を調べます。

加速器探索では、候補粒子を生成できる条件と、ほかの粒子との反応の強さを検証します。

天文学的観測

重力レンズ、銀河や銀河団の運動、CMB、大規模構造は、ダークマターの量と分布を調べる天文学的な手段です。

これらの観測から、ダークマターがどのように分布し、どの程度衝突しにくく、構造形成へどのような影響を与えたかを絞り込めます。

粒子実験と天文観測は、異なる方向から同じ未知の質量成分へ迫っています。

粒子探索で分かってきたこと

未検出が候補をどう絞り込むのか

各実験には、探索できる粒子の質量と相互作用の強さに範囲があります。

ある範囲で信号が得られなければ、その条件を持つ候補へ制限が加わります。次の実験では、まだ調べられていない質量や、さらに弱い相互作用の領域へ探索範囲を広げます。

未検出の結果は、候補粒子が存在できる条件を狭め、次に調べるべき範囲を示します。

重力理論を修正する考え方

もう一つの研究方向として、未知の物質を加える代わりに、銀河規模や宇宙規模で重力の働き方を修正する理論があります。

一部の修正重力理論は、銀河の回転曲線に見られる規則性を少ない仮定で説明できる場合があります。

一方、銀河団の質量不足、バレットクラスター、CMB、大規模構造まで、幅広い観測を同時に再現する必要があります。

修正重力理論は、銀河から宇宙全体まで同じ枠組みで説明できるかが検証されています。

複数成分で構成される可能性

ダークマターが複数の成分から構成される可能性も研究されています。

たとえば、複数種類の粒子や、原始ブラックホールのような天体が異なる割合で混ざり、全体として重力効果を生み出している可能性があります。

一つの候補が見つかった場合も、その成分がダークマター全体のどの割合を担うのかを、銀河、銀河団、CMB、大規模構造から確かめる必要があります。

ダークマターについてよくある疑問

ダークマターは黒い物質ですか?

ここでの「ダーク」は、色ではなく、光を使った通常の方法で捉えにくい性質を表します。存在は、星や銀河の運動、重力レンズなどの重力的な影響から推定されています。

ダークマターは直接観測されていますか?

直接測定されているのは、星やガスの速度、背景銀河の像のゆがみ、CMBの温度差などです。これらを解析し、重力理論や宇宙モデルと比較することで、追加の質量分布を推定しています。

ブラックホールがダークマターなのですか?

原始ブラックホールは候補の一つです。観測によって質量範囲ごとの存在量が制限されており、ダークマターの一部を担う可能性が調べられています。

ダークエネルギーとは同じですか?

ダークマターは銀河や大規模構造の形成に関わる質量成分、ダークエネルギーは宇宙膨張の加速を説明する成分として扱われます。

粒子が見つからなければ重力理論が間違っているのですか?

未検出の結果は、特定の候補粒子が存在できる条件を狭めます。重力理論を修正する研究もあり、銀河の回転、銀河団、CMB、大規模構造を一つの枠組みで説明できるかが検証されています。

まとめ

ダークマターは、見える物質だけでは説明しにくい重力効果を担う質量成分です。

銀河の回転、銀河団の運動、重力レンズ、バレットクラスター、宇宙背景放射、大規模構造という異なる観測が、通常物質を上回る質量分布を示しています。

重力レンズの色付きマップやバレットクラスターの青い領域は、背景銀河のゆがみから求めた質量分布を疑似カラーで示したものです。こうした観測から、ダークマターがどこにどれほど分布しているかを推定できます。

現在の研究では、追加質量の必要性を確かめる段階から、その正体と性質を絞り込む段階へ進んでいます。

WIMP、アクシオン、ステライルニュートリノ、原始ブラックホールなどが候補として研究され、地下実験、加速器、宇宙観測によって条件範囲が狭められています。

さらに、重力理論を修正する考え方や、複数の成分からなる可能性も検証されています。異なる観測と実験が、同じ未知の質量成分をどこまで描き出せるかが、現在のダークマター研究の中心です。

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