ワームホールは、離れた二つの時空領域を、通常の空間を進むより短い経路で結ぶ理論上の構造です。
一般相対性理論では、時空の曲がり方によって、二つの領域を接続する複数のモデルを記述できます。入口にあたる二つの「口」と、その間を結ぶ「喉」を持つ構造として表されます。
ワームホールの核心は、空間内を光より速く移動することではなく、出発地と目的地を結ぶ経路そのものが短くなることです。
現在は、宇宙での形成条件、喉を維持する仕組み、安全に通過できる条件、観測で識別する方法が研究されています。ワームホールとして特定された天体は、現在までありません。
ワームホールとはどのような構造なのか

離れた時空領域を結ぶ幾何学
一般相対性理論では、重力を物体同士が引き合う力としてだけでなく、質量やエネルギーによって時空が曲がる現象として扱います。
時空の曲がり方によっては、通常の空間では遠く離れている二つの領域が、別の短い経路で接続される解を構成できます。
よく使われるのが、リンゴの表面を移動する虫のたとえです。表面を回れば長い距離になりますが、内部を貫く経路があれば、反対側まで短い距離で到達できます。
「時空のトンネル」という言葉は、この幾何学的な近道を表した比喩です。
ワームホールは既存の空間に筒を差し込む構造ではなく、時空自体のつながり方を表すモデルです。
二つの口と喉からなる構造
通過可能ワームホールは、模式的に二つの口と、それらを結ぶ喉に分けて説明されます。
二つの口は、同じ宇宙の離れた場所に置くモデルもあれば、異なる外部領域を結ぶモデルもあります。
喉は、二つの口の間で断面積が最も小さくなる領域です。喉の形状、長さ、内部の重力、時間の進み方は、採用する時空モデルによって変わります。
「入口」と「出口」という言葉も使われますが、双方向に通過できるモデルでは、どちらの口も入口と出口の役割を持ちます。
口と喉は機械的な部品ではなく、時空の幾何を説明するための名称です。
時空解から観測までの段階

一般相対性理論の方程式に解として現れることは、ワームホール研究の出発点です。
宇宙に存在する構造として評価するには、形成、安定性、通過、観測を順に考える必要があります。
| 段階 | 現在の研究 |
|---|---|
| 時空解 | 一般相対論・量子重力で複数のモデルを構成 |
| 形成 | 初期宇宙、量子揺らぎ、時空の位相変化などを検討 |
| 安定性 | 喉を維持する応力エネルギーと量子効果を研究 |
| 通過 | 潮汐力、放射、反作用、通過時間を評価 |
| 観測 | レンズ、シャドウ、軌道、重力波の特徴を比較 |
ワームホール研究は、数式で表せる幾何学を、形成可能な構造、安定した通路、観測可能な天体像へつなげる研究です。
ワームホールにはどんな種類があるのか

最大拡張時空に現れるアインシュタイン=ローゼン橋
1935年、アルベルト・アインシュタインとネイサン・ローゼンは、一般相対性理論の解を使い、二つの時空領域を結ぶ橋状構造を論じました。
この研究は、相対論と電磁気を結びつけ、特異点を避けた粒子モデルを作る試みの中で提案されたものです。
その後、シュワルツシルト時空を事象の地平線の内側まで数学的に最大拡張すると、二つの外部領域、ブラックホール領域、ホワイトホール領域が同じ時空図に現れることが明確になりました。
二つの外部領域を空間的に結ぶ部分が、アインシュタイン=ローゼン橋と呼ばれます。
この古典的な橋は時間とともに閉じるため、未来向きに進む観測者が、一方の外部領域からもう一方へ抜ける経路を持ちません。
アインシュタイン=ローゼン橋は、時空の接続を示す重要な理論構造ですが、旅行用の通路として設計されたモデルとは性質が異なります。
出典:Einstein & Rosen「The Particle Problem in the General Theory of Relativity」
Morris–Thorne型が示す通過条件
1988年、マイケル・モリスとキップ・ソーンは、人や宇宙船が通過できるワームホールの条件を具体的に検討しました。
Morris–Thorne型では、静的で球対称な時空を使い、二つの口と喉を持つ構造を考えます。
通過可能とするための主な条件は、次のとおりです。
- 喉が開いた状態を維持する
- 通路内に事象の地平線を作らない
- 有限の固有時間で反対側へ到達できる
- 通過者に加わる潮汐力を許容範囲へ抑える
- 入口と出口の周囲を安全な重力環境にする
喉が閉じる方向に働く重力へ対抗するため、古典的一般相対論のモデルでは、通常の物質が満たすエネルギー条件を破る応力エネルギーが必要になります。
Morris–Thorne型は、通過に必要な幾何学、重力、潮汐力、物質条件を同じモデルで検討した代表的なワームホールです。
出典:Morris & Thorne「Wormholes in spacetime and their use for interstellar travel」
量子重力とホログラフィーで扱うワームホール
近年は、量子もつれと時空のつながりを結びつける研究でも、ワームホールが登場します。
AdS/CFT対応と呼ばれるホログラフィーの枠組みでは、ある重力理論を、境界にある量子系で表現できる場合があります。
この対応を使うと、量子情報の伝達を、重力側では通過可能ワームホールを進む過程として記述できるモデルがあります。
ここでの目的は、量子もつれ、量子テレポーテーション、時空の幾何がどのように対応するかを調べることです。
ホログラフィーに現れるワームホールは、量子情報と重力を同じ数理構造から理解する手がかりとして研究されています。
ワームホールを宇宙で形成する経路
ワームホールの幾何学を宇宙の時間発展から作るには、二つの領域を接続する過程が必要です。
研究されている形成案には、初期宇宙の量子揺らぎ、時空の位相変化、量子重力が支配する微小構造、ブラックホール内部の量子効果などがあります。
初期宇宙と時空の量子揺らぎ
宇宙初期の極端に高温・高密度な環境では、時空自体にも大きな量子揺らぎがあった可能性があります。
非常に小さなスケールでは、時空のつながり方が一時的に変化し、微小なワームホール状構造が生じるという描像があります。
こうした描像は、時空が滑らかな連続体ではなく、量子的に揺らぐ構造を持つ可能性を調べる研究と結びついています。
ブラックホール内部と量子重力
ブラックホール中心では、一般相対性理論だけを適用すると特異点が現れます。
量子重力が特異点を別の時空構造へ置き換える場合、内部が別領域へ接続するモデルも研究対象になります。
モデルによっては、ブラックホール、ホワイトホール、ワームホールが同じ時空の異なる部分や進化段階として表されます。
この関係を理解するには、古典的一般相対論の解と、量子効果を含む時空を分けて考える必要があります。
ブラックホール中心の問題は、ブラックホールの特異点の記事で詳しく説明しています。
喉を維持するエネルギー条件
ヌルエネルギー条件と喉の広がり
一般相対論では、物質が持つエネルギー密度と圧力を、応力エネルギーテンソルで表します。
通常の物質は、光に近い経路に沿って測ったエネルギー密度が一定の条件を満たします。代表的なものがヌルエネルギー条件です。
古典的なMorris–Thorne型では、喉の断面が外側へ向かって開く形を維持するため、喉付近でヌルエネルギー条件を破る応力エネルギーが求められます。
これは、通常の重力で喉が閉じる効果に対して、幾何学を開いた状態に保つ役割を持ちます。
通過可能ワームホールの物質条件は、単に強いエネルギーを集める問題ではなく、エネルギー密度と圧力の組み合わせを制御する問題です。
カシミール効果が示す真空エネルギー
量子場では、真空も完全な空ではなく、量子的な揺らぎを持っています。
カシミール効果では、近接した導体などの境界条件によって、内部で許される量子場の状態が変化します。
その結果、板の間のエネルギー密度を周囲の真空より低い状態として扱えます。
この現象は、量子場が局所的に古典的なエネルギー条件を破る状態を作り得ることを示します。
ワームホールの喉を維持するには、必要な規模、形状、持続時間、量子場の反作用まで含めた評価が必要です。
エキゾチック物質と反物質の違い
ワームホール研究で使われるエキゾチック物質は、通常のエネルギー条件を破る応力エネルギーを持つ状態を指します。
一方、反物質は、電子に対する陽電子のように、通常の粒子と反対の電荷などを持つ粒子です。
反物質も正の質量とエネルギーを持ち、重力場では通常の物質と同じ方向へ応答すると考えられています。
エキゾチック物質はエネルギー条件に関する概念で、反物質は粒子の種類に関する概念です。
修正重力で物質条件を変える研究
一般相対論を拡張した修正重力理論では、時空の曲率に追加の項を導入します。
その効果を幾何学側へ移すことで、喉付近の通常物質がエネルギー条件を満たすワームホール解を構成する研究もあります。
この場合でも、修正重力理論自体が現実の重力をどこまで正しく表すか、観測と一致するかを検証する必要があります。
安全な通過を決める条件
ワームホールの喉を開いた状態に保てても、人や宇宙船が安全に通れるかは、さらに複数の条件で決まります。
潮汐力
重力の強さが頭と足で大きく違うと、物体は引き伸ばされたり圧縮されたりします。
Morris–Thorne型では、通過者が受ける潮汐加速度を地球の重力加速度程度へ抑える条件を検討できます。
喉の半径、時空の曲率、移動速度を調整することで、潮汐力の大きさが変わります。
放射と粒子
ワームホールの口が宇宙空間にあれば、光、ガス、宇宙線、背景放射などが通路へ入ります。
口の相対運動や重力によって光が青方偏移すると、通路内の放射エネルギーが高くなる場合があります。
安全性を評価するには、通過者が受ける放射線量や、粒子同士の衝突も調べます。
通過物体による時空の反作用
宇宙船や人も質量とエネルギーを持つため、ワームホールの時空へ重力的な影響を与えます。
小さなワームホールへ大きな質量が入れば、喉の形や安定性が変化する可能性があります。
通過可能性は、背景となる時空だけでなく、通過物体を含めた動的なモデルで評価する必要があります。
人工生成に必要な物理条件
人工的な生成を考えるなら、時空の曲率を作り、二つの口を配置し、喉を維持する応力エネルギーを制御する必要があります。
さらに、量子効果、放射、周囲の物質、通過者の反作用を含めて構造を安定させなければなりません。
現在の研究は、人工生成に必要な条件を理論的に分解し、それぞれが物理法則と整合するかを調べる段階にあります。
ブラックホール・ホワイトホールとの違い
ブラックホール、ホワイトホール、ワームホールは、一般相対性理論の時空を扱う点では共通していますが、中心となる性質が異なります。
| 項目 | ブラックホール | ホワイトホール | ワームホール |
|---|---|---|---|
| 中心的な性質 | 未来向きの経路が地平線の内側へ進む | 未来向きの経路が内部から外側へ進む | 離れた時空領域を接続する |
| 事象の地平線 | 持つ | 持つ | モデルによって異なる |
| 形成 | 恒星崩壊や天体合体 | 古典解では特殊な初期条件 | 初期宇宙や量子重力モデルで研究 |
| 通過 | 内部へ進む一方向の経路 | 内部から外部へ進む一方向の経路 | 通過可能モデルでは双方向 |
| 観測研究 | 軌道・電磁波・重力波・シャドウ | 理論的な放出信号などを検討 | レンズ・軌道・シャドウ・重力波 |
最大拡張時空と通過可能モデルの違い
最大拡張されたシュワルツシルト時空では、ブラックホール領域、ホワイトホール領域、二つの外部領域が同じ図に現れます。
この時空に現れるアインシュタイン=ローゼン橋は、未来向きに横断できる通路を作りません。
Morris–Thorne型は、事象の地平線を避け、喉を開いた状態に保つことで、双方向の通過経路を設計した別のモデルです。
「ブラックホールが入口、ホワイトホールが出口」という図は最大拡張時空の一部を単純化したもので、通過可能ワームホールの標準構造を表すものではありません。
ホワイトホールの因果構造については、ホワイトホールの記事で詳しく説明しています。
ワームホールを通ると光より早く着くのか
通過可能ワームホールが二つの遠い地点を短い距離で結んでいれば、通常の宇宙空間を進む光より早く目的地へ着く場合があります。
その理由は、宇宙船の速度が光速を超えるからではなく、ワームホール内の経路が短いためです。
通過者が自分の周囲で測る局所速度は、光速未満に保たれます。
たとえば、通常空間では100光年離れた二地点が、ワームホール内部では数キロメートルの距離で接続されていれば、短い固有時間で移動できます。
ワームホールによる早い到着は、超光速で走る仕組みではなく、時空の近道を選ぶ仕組みです。
二つの口に時間差があると何が起きるのか
相対論的な時間差
通過可能ワームホールが安定して存在し、二つの口を別々に動かせると仮定します。
一方の口を光速に近い速度で移動させたり、強い重力場の近くへ置いたりすると、特殊相対論や一般相対論の時間の遅れによって、二つの口の時計にずれが生じます。
ワームホール内部では二つの口が近い状態を保つ一方、外部から見ると時間の進み方が異なるため、入口と出口が別の時刻へ対応するモデルを作れます。
閉じた時間的曲線
二つの口の時間差が十分に大きくなると、未来へ向かって進みながら出発前の時刻へ戻る経路が時空図に現れる場合があります。
このように、未来向きの経路が一周して同じ時空上の出来事へ戻るものを、閉じた時間的曲線と呼びます。
閉じた時間的曲線は、原因と結果の順序、情報の起源、過去の出来事への介入といった因果律の問題を生みます。
年代記保護仮説
スティーヴン・ホーキングは、量子場の効果が閉じた時間的曲線の形成を妨げる可能性を、年代記保護仮説として提案しました。
時間旅行可能な領域が形成される直前に、真空の量子揺らぎや応力エネルギーが大きくなり、時空へ強い反作用を与える可能性があります。
この反作用がワームホールの喉を変形させたり、時間差の増大を止めたりするかが研究されています。
年代記保護仮説は、因果律を破る時空が量子効果によって制限される可能性を示す研究上の提案です。
出典:Stephen Hawking「Chronology protection conjecture」
2022年の量子プロセッサー実験で何を測ったのか
2022年、GoogleのSycamore量子プロセッサーを使って、通過可能ワームホールに対応する量子情報の振る舞いを調べる実験が報告されました。
この研究では、量子重力の研究で使われるSYK型モデルを、少数の量子ビットで実行できる形へ簡略化しています。
量子プロセッサー上に実装したもの
研究チームは、二つの量子系を量子もつれで結び、その間に特定の相互作用を加えました。
一方の量子系へ情報を入力すると、情報はいったん量子系全体へ広がり、その後、もう一方の量子系から読み出せる形で現れました。
量子情報の言葉では、この過程を特定の量子テレポーテーションとして説明できます。
重力側の記述との対応
ホログラフィーの対応を使うと、同じ量子情報の伝達を、負のエネルギーによって一時的に通過可能になったワームホールとして記述できます。
情報が量子系の一方から他方へ現れるまでの時間や、相互作用の符号を変えたときの挙動が、重力側の理論予測と比較されました。
この実験の意味は、量子情報の振る舞いと、通過可能ワームホールの重力記述が同じ数理構造を共有することを量子ハードウェア上で調べた点にあります。
実験が作ったものの位置づけ
実験装置の内部で動いたのは量子ビットと量子情報で、三次元空間に天体サイズの通路を生成したものではありません。
量子テレポーテーションと重力理論の対応を利用し、量子重力を実験室で研究する方法を示した成果です。
出典:Caltech「Physicists Observe Wormhole Dynamics Using a Quantum Computer」
ワームホールを探す観測方法

ワームホールの口が強い重力を持つ場合、遠方からはブラックホールに似た暗い天体として見える可能性があります。
そのため、単に暗い、重力が強いという特徴だけでなく、モデルが予測する複数の観測量を組み合わせます。
重力レンズと多重像
重力レンズは、天体の重力によって背景光の経路が曲がる現象です。
一部のワームホールモデルでは、通常のブラックホールや恒星とは異なる位置、明るさ、数を持つ像が現れる場合があります。
反対側の口から入った光がこちら側へ届くモデルでは、通常の重力レンズとは異なる光源配置も考えられます。
シャドウと光子リング
強い重力を持つコンパクト天体の周囲では、光が何度も回り込む光子軌道が生じます。
観測画像には、中央の暗い領域と、その周囲に光が集まるリングが現れる場合があります。
喉の形、回転、周囲のプラズマ、反対側から届く光によって、リングの半径、数、明るさにモデル固有の差が生じる可能性があります。
恒星・ガス・ホットスポットの軌道
ワームホール候補の周囲を回る恒星やガスの軌道も、時空の形を調べる手がかりです。
安定して回れる最小半径、軌道の歳差運動、周期、ホットスポットの明るさの変化を測定します。
同じ質量と回転を持つブラックホールモデルと比較し、軌道運動を一貫して説明できるかを調べます。
合体後の重力波
二つのコンパクト天体が合体すると、合体後の天体は固有の振動をしながら安定した状態へ移ります。
この振動が作る重力波をリングダウンと呼びます。
振動数と減衰時間は、天体の質量、回転、境界条件、内部構造によって変化します。
事象の地平線に近い場所で波を反射する構造があるモデルでは、主信号の後に弱い波が遅れて現れるエコーも予測されます。
エコーは、ワームホール以外のエキゾチックコンパクト天体でも生じ得るため、リングダウン全体の周波数、位相、減衰と合わせて評価します。
複数の観測量を同じモデルで説明する
重力レンズだけ、シャドウだけ、重力波だけでは、別のコンパクト天体モデルと似た結果になることがあります。
候補を絞るには、電磁波画像、周囲の軌道、時間変化、重力波を同じ時空モデルで計算し、すべてのデータを説明できるかを比較します。
ワームホールの識別では、一つの異常信号よりも、複数の観測に同じ幾何学的特徴が現れることが重要です。
一般相対論・量子理論・観測の現在地
| 研究領域 | 現在の位置づけ |
|---|---|
| 一般相対論 | 複数のワームホール時空を構成できる |
| 通過可能モデル | 地平線、潮汐力、喉、通過時間の条件を設計できる |
| 量子場 | 負のエネルギー状態と量子不等式を研究 |
| 量子重力 | 量子もつれ、ホログラフィー、時空接続の関係を研究 |
| 観測 | レンズ、軌道、シャドウ、重力波のモデル差を比較 |
| 未解明 | 自然形成、長期安定性、天体としての実在性 |
一般相対性理論では、ワームホールの幾何学と通過条件を具体的に計算できます。
量子場理論では、喉を維持するエネルギー状態と、その大きさや持続時間に対する制限が研究されています。
量子重力とホログラフィーでは、量子もつれと時空の接続を同じ枠組みで理解する試みが進んでいます。
ワームホール研究の中心は、時空の接続を表す方程式を、自然な形成過程、安定した通路、観測可能な特徴へ結びつけることです。
ワームホールについてよくある疑問
ワームホールとは何ですか?
離れた二つの時空領域を、通常より短い経路で結ぶ理論上の構造です。通過可能モデルでは、二つの口と、その間を結ぶ喉として表されます。
ワームホールは通り抜けられますか?
Morris–Thorne型では、喉を開いた状態に保ち、事象の地平線を避け、潮汐力を抑えることで通過経路を構成できます。古典的一般相対論では、喉付近に通常のエネルギー条件を破る応力エネルギーが必要です。
ブラックホールの中にワームホールはありますか?
最大拡張された理想的なシュワルツシルト時空には、アインシュタイン=ローゼン橋が現れます。恒星崩壊で形成された現実的なブラックホールと、通過可能なMorris–Thorne型は異なる時空モデルです。
ワームホールで時間旅行できますか?
安定した通過可能ワームホールを仮定し、二つの口に相対論的な時間差を作ると、閉じた時間的曲線が現れるモデルがあります。量子場の反作用や年代記保護が、この構造の形成を制限する可能性も研究されています。
量子コンピューターでワームホールを作ったのですか?
2022年の実験では、Sycamore量子プロセッサー上で量子情報の伝達を測定しました。その過程は、重力側では通過可能ワームホールとして記述できます。実験室の三次元空間に天体サイズの通路を生成した研究ではありません。
まとめ|ワームホールは時空の接続条件を調べる理論構造
ワームホールは、離れた二つの時空領域を、通常より短い経路で結ぶ理論上の構造です。
通過可能モデルでは、二つの口と喉を持ち、通過者は局所的に光速を超えることなく、通常空間より短い距離を進みます。
最大拡張されたシュワルツシルト時空に現れるアインシュタイン=ローゼン橋は、未来向きに横断する経路を持ちません。
Morris–Thorne型は、事象の地平線を避け、喉を開き、潮汐力を抑えることで通過可能性を検討したモデルです。
古典的一般相対論では、喉付近にヌルエネルギー条件を破る応力エネルギーが求められます。量子場、カシミール効果、修正重力は、この条件をどのように実現または置き換えられるかを調べる研究対象です。
二つの口へ相対論的な時間差を作ると、閉じた時間的曲線が生じるモデルがあります。量子場の反作用や年代記保護仮説は、因果律を破る時空の形成を制限する可能性を扱います。
2022年の量子プロセッサー実験では、量子テレポーテーションと通過可能ワームホールの重力記述が持つ数理的な対応が調べられました。
今後の焦点は、ワームホールの幾何学を自然な形成過程と結びつけ、レンズ、軌道、シャドウ、重力波に現れるモデル固有の特徴を見つけることです。
参考情報
- Einstein & Rosen|The Particle Problem in the General Theory of Relativity
アインシュタイン=ローゼン橋の出発点となった1935年の原論文。 - Morris & Thorne|Wormholes in spacetime and their use for interstellar travel
通過可能ワームホールの幾何学、潮汐力、エネルギー条件の確認に使用。 - Stephen Hawking|Chronology protection conjecture
閉じた時間的曲線と量子場の反作用に関する年代記保護仮説の確認に使用。 - Caltech|Physicists Observe Wormhole Dynamics Using a Quantum Computer
2022年のSycamore量子プロセッサー実験の内容と位置づけの確認に使用。