宇宙背景放射のCMB全天マップと約38万年後の光を表現したアイキャッチ画像

宇宙の始まりと構造

宇宙背景放射とは?約38万年後の光から何がわかるのか

楕円形の地図に、赤と青のまだら模様が広がっています。宇宙背景放射として紹介されるこの一枚は、初期宇宙から届くマイクロ波のごく小さな温度差を可視化した地図です。

赤は平均よりわずかに高温、青はわずかに低温の場所を示します。その差は平均温度の十万分の一ほどです。人の目には見えないマイクロ波の違いを読み取れるよう、観測データに色が割り当てられています。

この光が自由に進み始めたのは、宇宙誕生から約38万年後です。色と模様を詳しく調べると、銀河が生まれる前の宇宙の状態や、現在の宇宙を形づくった初期条件が見えてきます。

宇宙背景放射とは何の光なのか

約38万年後に自由に進み始めた光

宇宙背景放射は、英語のCosmic Microwave Backgroundを訳した呼び名で、頭文字をとってCMBと書かれます。日本語では宇宙マイクロ波背景放射とも呼ばれます。

初期宇宙には、宇宙全体を満たす高温の放射がありました。その光が物質と最後に散乱し、長い距離を自由に進み始めたのが、宇宙誕生から約38万年後です。

CMBは、初期宇宙を満たしていた光が物質から離れ、宇宙空間を自由に進み始めたものです。

当時は、星や銀河が形成される前の時代でした。CMBは特定の天体が放った光ではなく、その時代の宇宙全体に広がっていた光のなごりです。

「宇宙の赤ちゃん写真」と表現されることがあります。宇宙がごく若かった時代の情報を伝えるという点では、イメージをつかみやすい言い方です。

観測では可視光の写真を撮るのではなく、マイクロ波の強さを方向ごとに測り、全天地図へまとめます。赤や青は、測定された温度差を読み取るための色です。

全方向に広がる最終散乱面

CMBは、空のあらゆる方向から届きます。私たちが見ているのは、自分を中心として全方向に広がる、約38万年後の宇宙です。

光が物質と最後に散乱した領域は、最終散乱面と呼ばれます。地球から見ると、私たちを取り囲む球面のように見えます。

最終散乱面は、現在の私たちが光で見通せる最も古い時代の境界です。

別の銀河に観測者がいれば、その観測者も自分を取り囲む最終散乱面を見ます。観測者の位置が変われば、見える領域も少しずれます。CMBが全方向から届くのは、光が届く範囲が観測者ごとに決まるためです。

約38万年より前を光で見られない理由

初期宇宙には光が満ちていた

宇宙誕生から約38万年より前にも、光は存在していました。初期宇宙は高温で、放射に満ちた状態でした。

このころの宇宙では、電子と原子核がばらばらに飛び交い、プラズマをつくっていました。自由に動く電子が多いと、光は電子に何度も散乱され、進む向きを変えます。

初期宇宙の光は自由電子に何度も散乱され、遠くまでまっすぐ進めない状態でした。

この時代は「宇宙が不透明だった」と表現されます。光は満ちていましたが、遠くの情報をそのまま運べない状態だったという意味です。

再結合と光子の脱結合

宇宙が膨張すると、全体の温度は下がっていきます。やがて温度が十分に下がると、ばらばらだった電子と原子核が結びつき、中性の原子が形成されるようになりました。

自由電子が減ると、光は散乱されにくくなり、長い距離を進めるようになります。原子が形成される過程を再結合、光が物質と頻繁に作用しなくなる過程を光子の脱結合と呼びます。

二つはほぼ同じ時期に起こります。再結合は物質の変化、脱結合は光の変化を表します。CMBは、脱結合の時代に最後の散乱を受け、その後宇宙空間を進み続けてきた光です。

「宇宙の晴れ上がり」という比喩

この時期はよく、宇宙の晴れ上がりと呼ばれます。霧が晴れて遠くまで見通せるようになる様子に重ねた表現で、光が自由に進み始めた変化をつかむには便利です。

実際の宇宙では、自由電子の数が減ることで光の散乱が少なくなりました。この変化は一定の時間をかけて進みます。

そのため最終散乱面には、時間と距離の方向にわずかな厚みがあります。「晴れ上がり」は、再結合と脱結合の流れを直感的に表した比喩です。

初期宇宙で光が自由電子に散乱され、宇宙が冷えて中性原子が形成されると光が自由に進み始める過程を示す図解
初期宇宙では、光が自由電子によって何度も散乱されていた。宇宙が冷えて中性原子が形成されると自由電子が減り、光は物質から離れて自由に進み始めた。
※再結合と光子の脱結合の流れを簡略化したMystery Labo独自図解です。

なぜ現在はマイクロ波として届くのか

宇宙膨張が光の波長を引き伸ばした

脱結合のころに自由に進み始めた光は、現在より短い波長を持っていました。当時の宇宙は現在より高温で、放射もその温度に対応した波長分布を持っていました。

その光が私たちへ届くまでの間、宇宙は膨張を続けてきました。空間が広がると、その中を進む光の波長も引き伸ばされます。

短かった波長は長く伸び、現在ではマイクロ波の領域に入っています。この変化は宇宙論的赤方偏移と呼ばれます。

宇宙膨張によってCMBの波長は伸び、現在は低温のマイクロ波として観測されています。

平均温度は約2.725K

CMBには温度があります。光に温度というと不思議に聞こえますが、CMBは黒体放射と呼ばれる、温度によってスペクトルの形が決まる放射に極めて近い性質を持っています。

そのスペクトルから温度を求めると、全天の平均で約2.725Kです。記事では約2.7Kと表すこともあります。

この性質を高い精度で測定したのが、COBE衛星に搭載されたFIRASです。観測値と理論上の黒体曲線は、ほとんど区別できないほど重なりました。

約2.725Kの黒体スペクトルは、高温だった初期宇宙が膨張しながら冷えてきたことを示す重要な観測結果です。

COBE衛星のFIRASが測定した宇宙背景放射のスペクトルと理論上の黒体放射曲線を比較したグラフ
COBE衛星のFIRASが測定した宇宙背景放射のスペクトル。横軸は波数、縦軸は放射の強さを表す。観測値は約2.725Kの黒体放射曲線とほぼ区別できないほど一致している。
出典:NASA / COBE FIRAS(パブリックドメイン)|Wikimedia Commons

宇宙背景放射のカラーマップは何を表しているのか

Planck衛星の2018年公開データをもとに作成された宇宙マイクロ波背景放射の全天マップ
Planck衛星の2018年公開データをもとに作成されたCMB全天マップ。前景放射などを分離した観測データの温度差に疑似カラーを割り当てている。
出典:Planck / ESA, Planck Collaboration、画像処理:Mark McCaughreanCC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

よく見かける楕円形のカラーマップには、形、色、模様のそれぞれに意味があります。複数の周波数で観測したマイクロ波へ補正や成分分離を加え、全天の温度差を一枚にまとめています。

楕円形は全天を一枚に広げた形

楕円形は、私たちを取り囲む全天を一枚の平面へ展開した形です。丸い地球の表面を世界地図へ広げるのと似ています。

地図の中央と外周は、全天を平面へ配置するために生じた位置です。宇宙空間の中心や果てを示しているわけではありません。

赤と青は温度差を示す疑似カラー

マイクロ波は人の目には見えません。そこで、方向ごとの温度差を読み取れるよう、観測データへ赤や青を割り当てています。

赤は平均よりわずかに高温、青は平均よりわずかに低温の場所です。その差は平均温度約2.725Kに対して十万分の一程度です。

CMB全天マップの赤と青は、極めて小さな温度差を強調した疑似カラーです。

銀河系などの前景放射を分離する

観測装置が空から受け取るマイクロ波には、CMBに加えて、私たちの銀河系から届く放射も含まれています。銀河系の塵が出す放射や、高速の電子が磁場の中で出すシンクロトロン放射などです。

このほか、自由・自由放射、個々の電波源、観測装置のノイズも加わります。

そこで、同じ空を複数の周波数で観測します。放射の種類によって周波数ごとの強さの変化が異なるため、その違いを利用してCMBと前景放射を分離します。

公開されているCMB全天マップは、複数周波数の測定、補正、前景放射の分離を経て作られています。

複数周波数のマイクロ波観測から銀河系の前景放射や太陽系運動による偏りを除去し、宇宙背景放射の全天マップを作る流れを示す図解
宇宙背景放射の全天マップは、複数周波数の観測から銀河系の前景放射や太陽系の運動による偏りを分離し、残った微小な温度差を疑似カラーで表したデータ画像である。
※CMB全天マップの作成工程を簡略化したMystery Labo独自図解です。

太陽系の運動による偏りも分離する

観測されたCMBには、空の一方向がわずかに高温、その反対方向が低温に見える大きなムラがあります。これは双極子成分と呼ばれます。

主な原因は、太陽系がCMBを基準とした座標系に対して動いていることです。進行方向ではわずかに高温、反対方向ではわずかに低温に見えます。

初期宇宙に由来する細かな温度ムラを調べるときは、この双極子成分も分離します。こうして残った模様が、初期宇宙の物理を調べる中心的なデータになります。

温度ムラは何を意味するのか

初期宇宙の密度差を含む記録

前景放射や双極子成分を分離したあとに残るのが、十万分の一ほどの細かな温度ムラです。ここに初期宇宙の情報が含まれています。

温度ムラは、当時の密度差と深く関係しています。赤と青の分布には、密度だけでなく複数の物理現象が反映されています。

重力ポテンシャル、光子と通常物質の振動、物質の動きによるドップラー効果などが、観測される温度差へ影響します。

CMBの温度ムラは、初期宇宙の密度差を含む複数の物理過程が重なった記録です。

後の銀河や大規模構造につながった

このわずかな密度差は、その後の宇宙の成長を左右しました。周囲より少し密度が高い場所には、重力によって物質がさらに集まりやすくなります。

長い時間をかけて、高密度側は銀河や銀河団、フィラメントへ成長しました。物質が少なかった領域は、現在のボイドへつながっています。

CMBに記録された温度ムラは、現在の銀河やコズミックウェブへ成長する前の初期条件です。

宇宙背景放射より後に星や銀河が形成されていく時代は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などの赤外線観測によって詳しく調べられています。

初期の密度ゆらぎがフィラメントやボイドへ成長する流れは、宇宙のボイドとは何かを扱った記事で詳しく説明しています。

模様を角度ごとに統計解析する

研究では、地図の斑点を見た目だけで判断するのではなく、模様の大きさごとに、どれほど強い温度ムラがあるかを統計的に調べます。

その結果を表すのが角度パワースペクトルです。グラフには、音響ピークと呼ばれる複数の山が現れます。

ピークの位置や高さには、初期宇宙で光と通常物質が起こしていた振動の情報が含まれています。

ピークがどの角度に現れるかは、空間の曲率とも関係します。観測されたパターンを宇宙モデルと比較することで、空間がどの程度曲がっているかを絞り込めます。

宇宙の曲率は、CMBの模様を統計解析し、宇宙モデルと比較することで推定されます。空間の曲率と宇宙の形については、宇宙の形とは何かを扱った記事で説明しています。

宇宙背景放射から何がわかるのか

CMBから得られる情報には、観測装置が直接測るものと、宇宙モデルとの比較から推定するものがあります。この違いを分けると、どこまでが観測で、どこからが推定なのかが見えやすくなります。

観測装置が直接測定するもの

観測装置が直接測るのは、周波数ごとのマイクロ波の強さ、空の方向ごとの温度差、光の振動方向に関する偏光などです。

複数周波数の観測では、CMBと同時に銀河系などの前景放射も測定されます。

全天マップや角度パワースペクトルは、こうした測定値へ補正、成分分離、統計解析を加えて作られます。

宇宙モデルと比較して推定するもの

宇宙の年齢、通常物質の割合、ダークマターやダークエネルギーの割合、空間曲率、初期ゆらぎの性質、再電離の時期などは、観測されたパターンと宇宙モデルを比較して推定されます。

宇宙モデルに含まれる値を変えながら、観測された温度ムラや偏光のパターンと最もよく合う組み合わせを探します。

宇宙の年齢や成分比は、CMBの観測データと宇宙モデルの比較から求められます。

たとえば宇宙の成分比では、目に見える通常物質は全体の一部で、大半はダークマターとダークエネルギーが占めると見積もられています。

CMBには、ダークマターやダークエネルギーが宇宙膨張や構造形成へ与えた影響が反映されています。そのパターンを使い、各成分の割合を絞り込みます。

詳しくは、ダークマターとは何かダークエネルギーとは何かの記事で説明しています。

ビッグバン宇宙論を支える理由

CMBがビッグバン宇宙論を支えるのは、複数の観測結果が、高温・高密度だった初期宇宙の予測と一致するためです。

全天からほぼ一様に届くこと、約2.725Kのほぼ完全な黒体スペクトルを持つこと、微小な温度ムラが後の構造形成につながること。これらは、宇宙が高温の状態から膨張し、冷えてきたという説明と整合します。

CMBは、ビッグバン宇宙論を支える中心的な観測証拠の一つです。宇宙膨張や軽元素の存在比など、独立した観測結果と合わせることで、現在の標準的な宇宙像が組み立てられています。

ビッグバン宇宙論全体の観測根拠は、ビッグバンとは何かを扱った記事で整理しています。

宇宙背景放射はどのように観測されてきたのか

1964年の検出と1965年の発表

CMBは、1964年にベル研究所のアーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンが、大型のホーンアンテナを使った観測中に捉えました。アンテナをどの方向へ向けても、同じようなマイクロ波の雑音が残りました。

この結果は翌1965年に発表されました。

ニュージャージー州ホルムデルのホーンアンテナ。ペンジアスとウィルソンが宇宙背景放射を検出した際に使われた
ニュージャージー州ホルムデルのホーンアンテナ。ここで検出された全天から届くマイクロ波の雑音が、宇宙背景放射だと分かった。
出典:NASA, via Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

二人は装置の不具合や周囲からの雑音を詳しく調べました。それでも信号は全天から届き続けました。

同じころ、プリンストン大学では、高温の初期宇宙から残る放射を理論的に予測し、観測しようとしていた研究者たちがいました。

両者の研究が結びつき、観測されたマイクロ波がCMBだと理解されました。理論による予測と観測された信号が結びつき、初期宇宙から残る放射の存在が確認されました。

ペンジアスとウィルソンは、この功績によって1978年のノーベル物理学賞を受賞しました。

COBEが黒体スペクトルと温度ムラを測定

発見から二十数年後の1989年、NASAはCOBE衛星を打ち上げました。搭載されたFIRASは、CMBのスペクトルが黒体放射とほとんど区別できないほど一致することを精密に示しました。

同じ衛星のDMRは、全天にわずかな温度の異方性、つまり温度ムラがあることを検出しました。

COBEによって、CMBの存在を確かめる段階から、CMBを使って宇宙の性質を測る段階へ進みました。

WMAPとPlanckが精度を高めた

続くWMAPは、全天の温度差をより高い精度で測り、温度ムラの統計から宇宙の年齢や成分を絞り込みました。

ESAのPlanck衛星は、さらに高い角分解能と幅広い周波数帯で観測し、前景放射の分離、偏光の測定、小さな角度スケールの解析を進めました。

COBE、WMAP、Planckによる宇宙背景放射マップの分解能比較
COBE、WMAP、PlanckによるCMBマップの比較。後の観測ほど、小さな角度スケールの温度ムラまで識別できるようになった。
出典:NASA/JPL-Caltech/ESA, via Wikimedia Commons

三つの地図を並べると、世代ごとに細かな模様まで見えるようになったことが分かります。

前景放射を分離する精度、偏光を測る精度、小さな温度ムラを識別する能力が高まるほど、宇宙の年齢、成分、曲率、初期ゆらぎを詳しく調べられます。

CMBが伝える最も古い時代

通常の光で見えるのは約38万年後まで

CMBが伝えるのは、宇宙誕生から約38万年後の状態です。それ以前の宇宙では光が何度も散乱されていたため、その時代の電磁波は現在まで一直線に届きません。

CMBは、現在直接観測できる電磁放射のなかで、最も古い時代の情報を持つ光です。

ビッグバンの瞬間そのものではなく、光が自由に進めるようになった時代の記録です。

さらに前の時代の情報は、宇宙背景ニュートリノや原始重力波が持っている可能性があります。

宇宙背景ニュートリノには間接的な観測手がかりがあります。原始重力波についても、CMB偏光などを使って探索が続いています。

インフレーションを探る手がかり

CMBの温度ムラは、宇宙のごく初期に急激な膨張が起きたとするインフレーションの考えと整合する特徴を持っています。

温度ムラの大きさや分布、空間的な性質は、多くのインフレーションモデルが予測する初期ゆらぎとよく合います。

インフレーションを起こした仕組みについては複数のモデルが提案され、観測データとの比較が続いています。

大きな手がかりとして探されているのが、原始重力波がCMB偏光に残すと考えられるBモードです。

銀河系の塵も似た偏光パターンを作るため、前景放射を慎重に分離する必要があります。現在は原始重力波の強さへ上限が与えられ、どのインフレーションモデルが観測に合うかを絞り込む研究が進んでいます。

CMB偏光は、インフレーションの仕組みを絞り込む重要な観測手段です。

偏光や初期ゆらぎとインフレーションの関係は、インフレーション理論とは何かを扱った記事で説明しています。

ほかの観測と組み合わせて宇宙像を確かめる

CMBから推定される値は、採用する宇宙モデルによって変わります。そのため宇宙論では、複数の独立した観測を組み合わせます。

遠方の超新星を使った距離測定、銀河分布に現れるバリオン音響振動、重力レンズ、軽元素の存在比などです。

異なる観測が同じ宇宙像を支持するかを確かめることで、モデルの信頼性を高めています。

観測・処理・推定・研究中を分けるとどうなるか

同じCMBから得られる情報でも、直接測ったもの、データ処理で得たもの、宇宙モデルを通して推定したものでは、根拠の種類が異なります。

区分 内容
直接観測されている 全天から届くマイクロ波の強度、ほぼ完全な黒体スペクトル、方向ごとの微小な温度差や偏光
データ処理で得られる 前景放射や双極子成分を分離したCMB全天マップ、角度ごとの温度ムラの統計
宇宙モデルと組み合わせて推定する 宇宙の年齢、成分比、曲率、初期ゆらぎ、再電離に関する値など
理論と観測が整合している 高温・高密度の初期宇宙が膨張して冷え、約38万年後に光が自由に進み始めたという説明
観測から絞り込み中 インフレーションの具体的な仕組み、原始重力波、ビッグバン直後の物理、CMBより前の時代
地図を読むときの注意点 楕円形は全天の展開図、赤と青は疑似カラー、最終散乱面は光で見通せる最古の時代の境界

宇宙背景放射についてよくある疑問

宇宙背景放射はビッグバンの瞬間の光ですか?

宇宙背景放射は、宇宙誕生から約38万年後に、光が物質と最後に散乱して自由に進み始めた時代の光です。現在直接観測できる電磁放射のなかで、最も古い時代の情報を持っています。

なぜ光なのに目に見えないのですか?

宇宙膨張によって波長が引き伸ばされ、現在は可視光ではなくマイクロ波として届いているためです。人の目では見えませんが、マイクロ波を検出する装置で測定できます。

赤と青は実際の色ですか?

赤と青は、マイクロ波の小さな温度差を見分けやすくするために割り当てた疑似カラーです。赤は平均よりわずかに高温、青はわずかに低温の場所を示します。

宇宙背景放射は宇宙の端から届いていますか?

宇宙背景放射は、私たちを取り囲む全方向の最終散乱面から届きます。最終散乱面は、現在の私たちが光で見通せる最も古い時代の境界です。

宇宙背景放射だけで宇宙の年齢が分かるのですか?

宇宙の年齢は、CMBの温度ムラや偏光の統計を宇宙モデルと比較して推定します。超新星や銀河分布など、ほかの観測結果とも組み合わせて確かめられています。

まとめ

宇宙背景放射は、宇宙誕生から約38万年後に自由に進み始めた光です。初期宇宙を満たしていた光が、再結合と脱結合によって物質から離れ、現在まで宇宙空間を進んできました。

宇宙膨張によって波長が引き伸ばされ、現在は平均温度約2.725Kのマイクロ波として全天から届いています。

楕円形のカラーマップは、全天を平面へ展開し、微小な温度差へ疑似カラーを割り当てたデータ画像です。前景放射や太陽系の運動による成分を分離し、初期宇宙に由来する模様を取り出しています。

その温度ムラには、現在の銀河やフィラメント、ボイドへ成長する前の密度差が記録されています。模様を統計解析し、宇宙モデルと比較することで、宇宙の年齢、成分比、曲率、初期ゆらぎの性質を推定できます。

CMBは、初期宇宙の状態を観測データとして残し、宇宙の歴史を読み解くための精密な記録です。

約38万年より前の宇宙、インフレーションの具体的な仕組み、原始重力波については、CMB偏光やニュートリノ、重力波などを手がかりに研究が続いています。

参考ESA|Planck and the cosmic microwave background

-宇宙の始まりと構造
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