宇宙の年齢は約138億年です。一方、観測可能な宇宙の半径は約460億光年、直径では約930億光年とされています。
年齢よりも現在の半径の数字が大きくなるのは、光が進んでいる間にも宇宙が膨張し、光を出した領域までの距離が変化したためです。
観測可能な宇宙とは、宇宙誕生後から現在までに、私たちへ光や情報が届き得た範囲です。
光が届くまでにかかった時間と、その光を出した領域の現在位置を分けると、約138億年と約460億光年の違いが見えてきます。
観測可能な宇宙とは何か
観測可能な宇宙の範囲には、宇宙の年齢、光の速さ、宇宙膨張の歴史が関係しています。
現在の私たちに情報が届く範囲
観測可能な宇宙とは、高温・高密度の初期宇宙から現在までの間に、地球と因果的につながることができた領域です。
遠くの天体ほど、その光が地球へ届くまでに長い時間がかかります。現在までに届いた情報を使って調べられる範囲が、観測可能な宇宙です。
ここでいう情報には、可視光、電波、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線などの電磁波が含まれます。天文学では、複数の波長を組み合わせて宇宙を調べます。
観測可能な宇宙は、観測者の位置を中心とする球状の範囲として表されます。
望遠鏡の性能が高まると、観測可能な範囲の内部をより詳しく調べられます。一方、範囲そのものは、地球へ情報が届くまでの時間によって決まります。
観測可能な範囲と宇宙全体
観測可能な宇宙は、宇宙全体のうち、現在の地球へ情報が届き得た範囲です。
その外側にも空間や天体が続いている可能性があります。宇宙全体が有限か無限か、どこまで広がっているかは、観測と理論から制限している段階です。
観測可能な宇宙の大きさは、現在の私たちが調べられる範囲を表しています。
宇宙の大規模な空間曲率は、観測上ほぼ平坦です。平坦な空間には有限と無限の両方の可能性があります。空間の曲率と宇宙全体の形については、宇宙の形はどうなっているのかの記事で扱っています。
観測可能な宇宙の大きさはどれくらいか
観測可能な宇宙の大きさは、半径と直径で表されます。どちらも、宇宙膨張を考慮した現在の距離です。
半径は約460億光年
観測可能な宇宙の半径は、約460億光年です。資料によっては約465億光年と表されます。
この数字は、共動距離と呼ばれる距離の表し方にもとづきます。
共動距離は、宇宙膨張を考慮した現在の物差しで、光を出した領域が今どこにあるかを表します。
約460億光年は、光を出した領域の現在位置を表す共動距離です。
銀河の赤方偏移、宇宙背景放射、現在の膨張率などの観測データを、標準宇宙論モデルと組み合わせて求めます。
直径は約930億光年
地球から一方向の境界までが約460億光年なので、反対方向まで含めた直径は約930億光年になります。
資料によって約920億光年から約930億光年と表記されるのは、半径の丸め方が異なるためです。
約930億光年は、観測可能な範囲全体の差し渡しを表します。
約138億年・約460億光年・約930億光年の違い
三つの数字は、それぞれ宇宙の時間と現在距離を表しています。
| 数字 | 何を表すか | 考え方 |
|---|---|---|
| 約138億年 | 高温・高密度の初期状態から現在までの時間 | 宇宙の年齢 |
| 約460億光年 | 観測可能な宇宙の現在の半径 | 共動距離 |
| 約930億光年 | 観測可能な宇宙の現在の直径 | 半径の約2倍 |
約138億年は時間、約460億光年と約930億光年は現在の距離です。宇宙膨張を含めると、時間と現在距離の関係は膨張史によって決まります。
宇宙は約138億歳なのになぜ半径が約460億光年なのか
光が宇宙を進んでいる間にも、空間の距離尺度は変化してきました。そのため、光の飛行時間と、光を出した領域の現在距離には差が生まれます。
光の飛行時間と現在距離の違い
遠くの天体を見るとき、私たちが受け取るのは過去に放たれた光です。
光の飛行時間は、その光が地球へ届くまでにかかった時間を表します。現在距離は、宇宙膨張を考慮して、その光を出した領域が現在どこにあるかを表します。
光の飛行時間は過去から現在までの時間、現在距離は膨張後の位置を表します。
光を出した当時の距離、光が旅した時間、現在の距離は、それぞれ異なる値になります。
届いた光は天体の過去の姿を伝えます。時間がたつにつれて、より新しい光が地球へ届き、観測できる姿も更新されます。
光が進んでいる間にも空間が広がった
光は局所的には常に一定の速さで進みます。その一方で、光が通る空間の距離尺度は宇宙膨張によって変化します。
動く歩道の上を歩く人を考えると、出発点との距離が歩いた距離だけでは決まらないことをイメージできます。
宇宙膨張では、遠く離れた地点の間の距離尺度が大きくなります。
光が進む間に空間が広がったため、光を出した領域は現在、出発時よりも遠い位置にあります。
現在距離は宇宙の膨張史から計算する
現在距離を求めるには、宇宙がこれまでどのような速さで膨張してきたかを計算します。
宇宙膨張へ大きく影響する成分は、時代によって変わりました。初期には放射、その後は物質、比較的最近ではダークエネルギーが膨張の進み方へ影響しています。
約460億光年は、宇宙の膨張率が時代ごとに変化してきた歴史を積み上げて求めます。
宇宙の年齢や初期の高温・高密度状態については、宇宙の始まりとビッグバンの記事で扱っています。
私たちが見ている最も古い光は何か
遠くを見るほど、より古い宇宙を見られます。電磁波で直接さかのぼれる最古の時代を伝えるのが、宇宙背景放射です。
宇宙背景放射は約38万年後の光
初期宇宙は高温で、自由電子が多く存在していました。光は電子によって何度も散乱され、長い距離を直進しにくい状態でした。
宇宙誕生から約38万年後、温度が下がると電子と原子核が結びつき、中性原子が形成されます。すると光は物質との頻繁な散乱から離れ、宇宙空間を自由に進めるようになりました。
このとき自由に進み始めた光が、宇宙背景放射です。宇宙膨張によって波長が引き伸ばされ、現在は主にマイクロ波として観測されています。
宇宙背景放射は、宇宙誕生から約38万年後の状態を伝える、電磁波として最も古い光です。
宇宙背景放射の色や観測の歴史については、宇宙背景放射(CMB)とは何かの記事で詳しく扱っています。
最後の散乱面が示すもの
宇宙背景放射は、最後の散乱面と呼ばれる領域から届きます。
最後の散乱面は、光が物質との頻繁な散乱から離れた時代を、観測者の周囲に球面状に見たものです。
最後の散乱面は、光によって直接たどれる最も古い時代を球面状に表しています。
それより前の宇宙は、高温プラズマによって光が何度も散乱される状態でした。より初期の時代は、元素存在量、宇宙背景放射のゆらぎ、原始重力波、宇宙ニュートリノ背景などを手がかりに調べます。
初期宇宙の状態には、インフレーション理論も関係しています。
観測可能な宇宙の境界
境界は情報が届く範囲を表す
観測可能な宇宙の境界は、現在までに地球へ情報が届き得た範囲を示します。
この境界は、観測者と情報の因果関係によって決まります。
観測可能な宇宙の境界は、空間の終点ではなく、現在までに情報が届いた範囲を示します。
その外側については、地球へ情報が届いていないため、宇宙原理や宇宙論モデルを使って状態を推定します。
別の場所には別の観測可能な宇宙がある
観測可能な宇宙は、観測者の位置を中心とした球として定義されます。
地球から観測する場合は地球が中心になります。別の銀河に観測者がいれば、その場所を中心とした観測可能な宇宙が広がります。
観測可能な宇宙の中心は、観測者の位置によって決まります。
異なる観測者の観測可能な範囲は一部が重なります。観測者の位置によって、情報を受け取れる領域が変わります。
望遠鏡の進歩で見える範囲はどう変わるか
高性能な望遠鏡を使うと、これまで検出できなかった暗い天体や遠方銀河を詳しく観測できます。
より高い感度と分解能によって、観測可能な宇宙の内部を詳しく調べられるようになります。
時間がたつことで、これまで届いていなかった光が新たに到達する場合もあります。
標準宇宙論モデルでは、加速膨張のために、将来も地球へ情報が届かない領域があると計算されます。
粒子的地平線・ハッブル半径・事象的地平線の違い
宇宙の距離と因果関係を考えるとき、粒子的地平線、ハッブル半径、事象的地平線という用語が登場します。
三つは、過去・現在・未来のどの範囲を表すかが異なります。
粒子的地平線
粒子的地平線は、宇宙の始まりから現在までに、私たちへ情報が届き得た範囲の限界です。
現在の共動距離で表すと約460億光年で、観測可能な宇宙の半径に対応します。
粒子的地平線は、過去から現在までの因果関係を表します。
ハッブル半径
ハッブル半径は、現在の宇宙膨張による後退速度が光速に相当する距離の目安です。
ハッブル半径は、現在の膨張率から求めます。粒子的地平線は、宇宙の膨張史全体を通じて情報が届いた範囲を表します。
ハッブル半径は現在の膨張率に関する距離、粒子的地平線は過去から現在までに情報が届いた範囲です。
ハッブル半径の外側から放たれた光でも、膨張率の変化によって、後に地球へ届く場合があります。
事象的地平線
事象的地平線は、現在から未来へ向けて、地球へ情報が届く範囲の限界です。
粒子的地平線が過去から現在までを扱うのに対し、事象的地平線は現在から未来にかけての因果関係を表します。
標準宇宙論モデルでは、宇宙の加速膨張が続くため、事象的地平線は有限の距離になると計算されます。
宇宙の未来と事象的地平線の関係は、ダークエネルギーの記事で扱う内容と重なります。
| 用語 | 意味 | 時間方向 |
|---|---|---|
| 粒子的地平線 | 現在までに情報が届き得た範囲の限界 | 過去から現在 |
| ハッブル半径 | 後退速度が光速に相当する距離 | 現在の膨張率 |
| 事象的地平線 | 将来、情報を受け取れる範囲の限界 | 現在から未来 |
観測可能な宇宙の外側には何があるのか
観測可能な宇宙の外側については、宇宙原理を見えていない範囲へ延長した推定が使われます。
宇宙原理は、大きなスケールで見れば、宇宙は場所や方向によって特別な違いを持たないという考えです。
観測可能な範囲が大規模にほぼ一様であることから、その外側にも似た空間と物質分布が続く可能性が高いと考えられています。
外側の状態は、観測可能な宇宙の性質を延長して考えた推定です。
宇宙全体の大きさ、有限か無限か、外側がどのような構造を持つかは、現在も観測と理論から制限している段階です。
別宇宙やマルチバースなど、さらに理論的な考えについては、宇宙の外側には何があるのかの記事で扱っています。
どこまでが観測で、どこからが推定なのか
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 直接観測するもの | 銀河の光、赤方偏移、宇宙背景放射、天体分布 |
| 観測から推定するもの | 宇宙年齢、膨張史、空間曲率、現在距離 |
| 標準宇宙論モデルで計算 | 約460億光年の半径、約930億光年の直径 |
| 理論から考える領域 | 粒子的地平線の外側、宇宙全体 |
| 宇宙全体に残る課題 | 宇宙全体の大きさ、有限・無限、外側の状態 |
約460億光年と約930億光年は、観測データと標準宇宙論モデルから計算した現在距離です。
銀河の光、赤方偏移、宇宙背景放射などを測定し、宇宙の膨張史と組み合わせて求めます。
観測可能な宇宙を理解するには、直接観測する量、モデルから計算する距離、理論から考える範囲を分けることが重要です。
観測可能な宇宙についてよくある疑問
観測可能な宇宙は宇宙全体ですか?
観測可能な宇宙は、宇宙全体のうち、現在までに私たちへ光や情報が届き得た範囲です。宇宙全体は、その外側まで続いている可能性があります。
なぜ宇宙は約138億歳なのに半径が約460億光年あるのですか?
光が進んでいる間にも宇宙の距離尺度が変化し、光を出した領域の現在距離が大きくなったためです。約460億光年は、宇宙膨張を考慮した共動距離です。
約930億光年先の天体を見ているのですか?
約930億光年は、観測可能な宇宙を現在の距離で表した直径です。電磁波として最も古い観測対象は、宇宙誕生から約38万年後の宇宙背景放射です。
観測可能な宇宙の端には壁がありますか?
観測可能な宇宙の端は、現在までに情報が届き得た範囲の限界です。観測者と情報の因果関係によって決まります。
地球は宇宙の中心ですか?
観測可能な宇宙の中心は、観測者の位置によって決まります。地球から見れば地球が中心になり、別の銀河の観測者には、その場所を中心とした観測可能な宇宙が広がります。
まとめ
観測可能な宇宙は、現在までに私たちへ光や情報が届き得た範囲です。
半径は約460億光年、直径は約930億光年です。どちらも宇宙膨張を考慮した現在距離で、観測データと標準宇宙論モデルから求めます。
宇宙の年齢である約138億年は、初期宇宙から現在までに経過した時間です。約460億光年は、最も遠い領域の現在の共動距離を表します。
光が進む間にも空間が膨張したため、光の飛行時間と現在距離には差が生まれます。
電磁波で直接さかのぼれる最古の時代は、宇宙誕生から約38万年後です。宇宙背景放射は、その時代に自由に進み始めた光です。
粒子的地平線は過去から現在までに情報が届いた範囲、ハッブル半径は現在の膨張率に関する距離、事象的地平線は未来に情報を受け取れる範囲の限界を表します。
観測可能な宇宙の外側については、宇宙原理と宇宙論モデルを使って推定します。宇宙全体の大きさ、有限か無限か、外側の状態は現在も研究が続く問題です。
観測可能な宇宙という言葉は、宇宙全体の大きさではなく、現在の私たちと因果的につながる範囲を表しています。
参考情報
記事の作成にあたり、以下の研究機関・天文学辞典・研究資料を参照しました。
- 国立天文台|宇宙の果てはどうなっているの?
光行距離と共動距離の違い、観測者ごとに観測範囲が異なること、外側を確認できないことの確認に使用。 - 天文学辞典(日本天文学会)|地平線(宇宙の)
粒子的地平線・事象的地平線の定義、粒子的地平線の共動距離が約460億光年であることの確認に使用。 - 天文学辞典(日本天文学会)|粒子的地平面
粒子的地平線が因果関係を持てた距離の上限であることの確認に使用。 - ESA|Planck reveals an almost perfect Universe
宇宙年齢が約138億年であること、宇宙背景放射が約38万年後の最古の光であることの確認に使用。 - ESA|Planck and the cosmic microwave background
初期宇宙が不透明だった仕組みと、原子形成後に光が自由に進み始めた過程の確認に使用。 - Planck Collaboration|Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters
宇宙年齢・空間曲率・ダークエネルギーなど標準宇宙論モデルのパラメータの確認に使用。